『本屋さんのダイアナ』柚木麻子 著 新潮文庫

本屋さんのダイアナ (新潮文庫)

わたしはSFやミステリなどのジャンル小説を中心(というかほぼそればっかり)に読んできているので、非ジャンル小説を読むのは新鮮でした。
という訳で初挑戦の柚木麻子作品でしたが、……大傑作。
ダイアナ(日本人です。正式表記は大穴)と彩子という、生まれも育ちも性格も対照的な二人の少女が小学三年生で出会ってからの十年強の人生を描いています。それぞれの一人称を交互に。
まずは二人のキャラクターそれぞれが良い。
訳あって金髪に染めていて本が大好きでちょっとぶっきらぼうなダイアナ。
同年代ではしっかりしているように見えるし勉強もできるけど実は甘えん坊で子供っぽい彩子。
お互いに相手の見た目も環境も羨ましく思っていることを、そしてそれ故に惹かれあうこと(後の反発も含めて)を、相互の視点を交互に描くことで立体的に浮かび上がせていく手腕がお見事です。
二人が中学、高校、大学、社会人、と成長していくにつれ、悩みや喜びや想いも変わっていく。
それでも常に本と共にあるのが本好きな読者としては大きく共感できるところ。
そして作中にでてくる数々の実在の名作と並んで架空のシリーズ『秘密の森のダイアナ』。
この架空の作品を巡る謎も、とても面白く、後半重要なカギとなります。

もし、もしですよ、この作品が映像化されたなら(映画よりもTVドラマかな、あってるの)ぜひテーマ曲として欲しい、というのが極めて個人的な趣味でこれです(RYUTist好きなのです)。