小説

『七人のイヴ』Ⅰ ニール・スティーヴンスン 著 日暮雅通 訳 新☆ハヤカワ・SF・シリーズ

長い間待ったよ。 ついに我らの、いや俺の。 ニール・スティーヴンスンが帰ってきた(邦訳で)。 『スノウ・クラッシュ』 『ダイヤモンド・エイジ』 『クリプトノミコン』 全部大好き。もちろん「ユリイカ」の特集号も愛している。 期待を込めまくって読み始…

『星界の戦旗? 宿命の調べ』 森岡浩之 著 ハヤカワ文庫JA

最新刊が5年ぶりにでるというので大慌てで積んでいた(←おいっ!)当時の最新刊(このときで前巻から9年ぶり)を読む。 ……、うん、『戦旗』でそれまでにあったことをほとんで忘れている。 そしてルビがいっぱいで読みにくい(というか自分がどういう風にこの…

『本屋さんのダイアナ』柚木麻子 著 新潮文庫

わたしはSFやミステリなどのジャンル小説を中心(というかほぼそればっかり)に読んできているので、非ジャンル小説を読むのは新鮮でした。 という訳で初挑戦の柚木麻子作品でしたが、……大傑作。 ダイアナ(日本人です。正式表記は大穴)と彩子という、生ま…

『ピース』ジーン・ウルフ著 西崎憲・館野浩美訳 国書刊行会

オールデン・デニス・ウィアという老人(?)の回想(?)の物語。 彼が頭に思い浮かべるのは今のこと過去のこと未来のこと。 少年時代の美しい叔母との暮らし。叔母の求婚者たちとの様々なエピソード。 中年時代、図書館員との恋と冒険と古書をめぐる推理。 …

『世界の果ての庭』西崎憲 創元SF文庫

最初のエピソードを読んで、傑作だ、と思った。 そしてそれは最後のページを読み終えたときも変わらなかった。 アメリカ人研究者と日本人女性作家の触れ合い、久しぶりに帰ってきた若返る病気に罹っいる母親、駅のある平面が何階も重なっている世界で目覚め…

『SFマガジン700 【海外編】』山岸真=編 ハヤカワ文庫SF

こちらも同じくSFマガジン700号の中から海外作品を集めたアンソロジー。 最初から最後まで、SFマガジンで海外SF短篇を読んでいる、という強い感覚があった。 未読だったシェクリ「危険の報酬」をようやく読めたのがなんといっても嬉しい。 文句なしの傑作で…

『SFマガジン700 【国内編】』大森望=編 ハヤカワ文庫SF

SFマガジン700号の中から国内作品を集めたアンソロジー。 巻頭の手塚治虫「緑の果て」から鈴木いずみ「カラッポがいっぱいの世界」までは、コミックありエッセイあり小説ありで、SFマガジンを読んでいる感がたっぷり。 平井和正「虎は暗闇より」の迫力も捨て…

『さよならの儀式』 大森望・日下三蔵編 創元SF文庫

創元SF文庫の〈年刊日本SF傑作選〉の第七集。 今回も安定の満足度、いや、傑作揃いで驚いた。 巻頭表題作の宮部みゆき「さよならの儀式」が、泣かせロボット物の定番感ある話と思いきや、主人公の心情設計の巧みさで陳腐さを回避して傑作に。 そこに藤井大洋…

『獅子の門』鬼神編 夢枕獏 著 カッパ・ノベルス

『獅子の門』、ここに完結。 ……本当に終わってた! 最初に読んだの大学生のころですよ。 長い時間をかけて全9巻。 当初の若者群像とかけ離れた雰囲気になりましたが、風のような男・羽柴彦六がいる限りそれは『獅子の門』です。 久我重明まさかの大躍進(板…

『幕末屍軍団』 菊地秀行 著 講談社ノベルス

幕末、徳川幕府は“ぞんびい”を兵士にすることで、起死回生を画策する。 謎のスーパー美形浪人・源庵&岡っ引き・平吉のコンビは江戸で、斬ってもしなない刺客と遭遇した新選組の沖田総司は京で、その巨大な陰謀に巻き込まれていく。 これだよ、これ。 遥か昔…

『獅子の門』人狼編 夢枕獏 著 カッパ・ノベルス

やはり今回は鹿久間源。この男で決まり。 不思議な愛嬌とウザイ感じが絶妙に混じりあっている天才(ただしイケメンではない)。 この男が羽柴彦六から出番を強奪した感じで、あっちへ行って戦い、こっちに行って釣りを(邪魔)する。 『獅子の門』ってこうい…

『夜明けの剣』ルーンの杖秘録3 マイケル・ムアコック 著 深町眞理子 訳 創元推理文庫

(創元推理文庫)" title="夜明けの剣 (創元推理文庫)" class="asin"> 新装版ホークムーンの第3巻。 ちなみに2巻を読んでからすでに2年半経過してます(泣)。 しかし、それだけの期間が開いていても、問題なく読めました。 いつもどおり、運命とルーンの杖…

『都市と星〔新訳版〕』アーサー・C・クラーク 著 酒井昭伸 訳 ハヤカワ文庫SF

クラーク作品の中で最も復刊して欲しかった作品が、酒井昭伸訳というありがたい形で読めるようになる幸せ。 それを噛みしめつつ読みました。 やっぱり傑作。 旧版は(SF読み始めの頃)中学校の図書館から借りて読んだ思い出の1冊。 大変感動して、美術の授業…

『後藤さんのこと』 円城塔 著 <想像力の文学>早川書房

短篇6篇(+α)の短篇集。 表題作の4色カラーにちゃんと意味があるのに驚きました。 というか、何という無駄なようで価値のある手間。 その表題作も好きですけど(あと+αも)、「考速」のカッコいいスピード感と「墓標天球」の美しい悲しさも大好きです。

『歌の翼に』トマス・M・ディッシュ 著 友枝康子 訳 国書刊行会

うわー、これは凄い。 グッと引き込まれました。 傑作。 物語、登場人物、文章。 どれをとっても完璧。そしてそれらの見事な融合。 特に主人公ダニエルの、良い点と悪い点を併せ持った立体的な造形に恐れ入りました。 タイトルのとおり“歌”をテーマ(のひと…

『NOVA1』大森望責任編集 河出文庫

大森望責任編集による日本SFの書き下ろしアンソロジー。 嗚呼このようなものが出版される時代が来ようとは〜(感涙)。 収録作は高レベルな作品が多くて大満足。 ベストは飛浩隆「自生の夢」。 凄みがありすぎる傑作。 そして斉藤直子「ゴルコンダ」も可愛く…

『15×24』 新城カズマ 著 スーパーダッシュ文庫

『15×24』堂々の完結。 4巻(=link four)から6巻(=link six)まで一挙に感想を書くことになったのは、単にわたしが4巻の感想を書いてなかったためで、意味はありません。 大晦日から元旦にかけての24時間。 その長くもあり短くもある時間で、15人の若者…

『アンブロークン アロー』神林長平 著 早川書房

雪風シリーズ第3弾。 ジャムから人類への宣戦布告(ロンバート大佐による代筆だけど)という神林作品とは思えない初っ端からの大インパクト。 そこから真っ直ぐ戦闘シーンの連続になる訳では無論ない。 雰囲気は、作中に“総力戦”という言葉があるように、神…

『15×24』 新城カズマ 著 スーパーダッシュ文庫

3巻に入ってきて、予想外の展開がゴロゴロ。 手に汗握って読みました。 そして、あっ! そんな(いい)ところで終わるなんて〜。 続き早く来い!

『禅銃』 バリントン・J・ベイリー 著 酒井昭伸 訳 ハヤカワ文庫SF

禅銃(ゼンガン) (ハヤカワ文庫SF ヘ 3-1) (ハヤカワ文庫 SF (579))作者: バリントン・J・ベイリー,Nathan Yodan,酒井昭伸出版社/メーカー: 早川書房発売日: 1984/10/15メディア: 文庫 クリック: 18回この商品を含むブログ (37件) を見る 京フェスでベイリー…

『15×24』 新城カズマ 著 スーパーダッシュ文庫

新城カズマ待望の長篇、1・2巻同時刊行(全6巻のはず)。 長野〜京都の長距離バスの中で読みました。 15人の視点人物の24時間の物語。 (15人目はあの人物?) わたしたちにとっての近過去、2005年の大晦日の1日(24時間)。 様々な個性。いろいろな特徴。 …

『おとり捜査官5 味覚』 山田正紀 著 朝日文庫

むむ。 予想以上。 1冊としての面白さ+シリーズ完結編の面白さだろう、と思ってはいた。 しかし。 まさかここまでになるとは……。 面白さと凄さの奔流に流される読書体験。 テーマ的には半村良の『石の血脈』に近いところがあると思いました。 傑作です。

『新しい太陽のウールス』ジーン・ウルフ 著 岡部宏之 訳 ハヤカワ文庫SF

読み終わるまで長かった。 話の展開はものすごく明確。 <新しい太陽の書>の続篇としてはこうなるだろう、ってとおりの展開。 でも、読んでいる間は全然そういう気がしないのは何故? じゃあ面白くないかというと、そんなことはない。 とても楽しい。 そこ…

『超弦領域 年刊日本SF傑作選』 大森望・日下三蔵 編 創元SF文庫

かなり前に読み終わってはいたのだけど、いろいろあって感想が今頃に。 前の『虚構機関』よりも更に収録作のレベルが上がっていると感じました。 収録15作品のわたしのベスト5は、 ・津原泰水「土の枕」 ・小林泰三「時空争奪」 ・法月綸太郎「ノックス・マ…

『おとり捜査官4 嗅覚』 山田正紀 著 朝日文庫

うわー、やっぱり今回も面白い〜。 というか4巻までならこの巻が1番好きかも。 派手で、ネタはたっぷりで、意外な過去が明かされる。 5巻を読みのが楽しみ。 でもシリーズは終わってしまう(はずな)ので、悲しい。

『ウロボロスの純正音律』 竹本健治 著 講談社

発売から3年近く経ってしまったけど、ようやく読了。 やっぱりこのシリーズはいいです。 といってもシリーズ物としては変則的な形の作品だ。 主人公の竹本健治は、むろん作者でもあるんだけど、前々作・前作と同じ竹本健治なんだけど実はその3人は違う竹本健…

『おとり捜査官3 聴覚』 山田正紀 著 朝日文庫

すごい。 まさかここまでやるとは。 単独作品としても、想像もつかないほど贅沢な造りなっているが、シリーズ物としての縛り(とそれからの逸脱)を効果的に入れて作品が何重にも深さを増している。 これは早く4巻目を読まなくては!!

『ヒルクライマー』高千穂遙 著 小学館

シンプル。 そして熱い。 帯にある“自転車山岳レース小説”というよりは、カバー折り返しにある“死ぬほど苦しくてもペダルを漕ぐのを止めない。その面白さに取り憑かれた人々”の物語。 自転車の初心者だった元マラソン選手の主人公が、徐々にのめり込んで行く…

『ユダヤ警官同盟』マイケル・シェイボン 著 黒原敏行 訳 新潮文庫

SF界3冠制覇の傑作。 ダメ人間主人公の作品は基本的には好きではないんだけど、この作品はばっちり乗れましたし、主人公マイヤー・ランツマンにはしっかりと感情移入してしまいました。 もうひとりの重要人物も含めて、わたしは元天才(的)な人物が好きなの…

『鴨川ホルモー』 万城目学 著 角川文庫

京都の町で行われる“ホルモー”という戦い。 京大の新入生となった主人公が誘われたサークルは、その“ホルモー”をするサークルであった。 楽しくて面白くて(ちょっと)怖くて爽やかに泣けるキャンパス伝奇青春ライフ。 シリアス伝奇バトルとして書けるような…