『螺旋階段のアリス』 加納朋子 著  文春文庫

螺旋階段のアリス (文春文庫)

50歳の、妻子あるエリートサラリーマンが脱サラ(ちょっと違うが)をして、子供の頃からの夢である探偵事務所を開業した。
彼は(長く社会人をやっているので)現実の私立探偵は、小説の中のように難事件に挑んだりするのではなく、地味なものだと当然知っていた。
しかし、現実は彼の予想を越えてさらに厳しいものだった。
依頼人が全く現れなかったのだ…。
やってきたのは猫を連れた少女が一人だけ。
そして彼女は、いつのまにか探偵助手になっていた。



というわけで、今頃読みました『螺旋階段のアリス』。
探偵仁木順平と助手市村安梨沙のコンビが、亡き夫が(妻のために)家に中に隠した鍵を捜すこと、浮気をしていない証拠を見つけることなどの、日常的ではあっても奇妙な依頼を解決していく連作集です。
タイトルどおりキャロルの『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』をモチーフにして、パラドキシカルな事件を描き、本格度は薄いと思いますが魅力的な物語となっています。
ただ、キャラクターを(加納作品としては)今ひとつ活かしきれてなかったと思いますので、その辺は続編に期待したいと思います。