『名探偵 木更津悠也』麻耶雄嵩 カッパ・ノベルス

名探偵 木更津悠也 (カッパ・ノベルス)
(自称ではなく世間も認める)名探偵・木更津悠也とそのワトソン役の(売れない)小説家・香月実朝のコンビが四つの事件を解決する短篇集。
その四つの事件を京の町に現れる白い幽霊が繋いでいきます。

やっぱり麻耶雄嵩だなー、と思うのは作中の現実に対して微妙な違和感を感じるところ。
普通のサラリーマンや普通の学生が出てきても、何かちょっと変だ。
それは幽霊が実在する、って部分ではなくキャラの名前が変ってことでもなく(いや、これはちょっとそうかも)うまく特定できない部分で感じるのだ。
読んでいてリアリティがないからという違和感ではなく、登場人物たちが(あるいは作者や読者である我々も)感じている現実世界に対する微妙な違和感が表現されていることが、独特のリアリティを生んでいるのだと思う。違和感があることは実は普通である、ってことで。
誰でも(たまには)感じるだろう自分が今生きていることの不思議さや、ありえない偶然に出会った時の驚きを、良いこととしてよりも違和感として感じてしまうところに、麻耶雄嵩ならではのねじれ具合がある。
その最たるものが、木更津と香月の探偵とワトソン役の関係にあるのは言うまでない。

で、余談としてプロレスマニア的ヨタ話をすると、ベビーのエース木更津の技をジョバー香月が受けまくって試合を盛り上げ、最後は必殺技名数理でピンされてお客は大喜び、という試合を香月が組み立てている、という感じでしょうか…。そういう読みでいうとメルはロック様なんだな、きっと。自分もすごい受けをするし。