雪が降ってきた。

[小説][SF][ホラー]『邪神決闘伝』菊地秀行 著 クトゥルー・ミュトス・ファイルズ 創土社
邪神決闘伝 (クトゥルー・ミュトス・ファイルズ)

あとがきでも触れられている、二重人格化した沖田総司が、恐竜が跋扈しそれに立ち向かうため蒸気機関車に列車砲を積んだり、アメリカ政府特殊部隊に吸血鬼がいたりの異形の西部で、坂本龍馬を追う『ウエスタン武芸帳』シリーズが大好きなわたしとしては、この本の話を知ったときから買う以外の選択はなかったのです。

という訳で、『邪神決闘伝』。大学時代は西部劇映画のTV放送があったら極力観ていたとはいえ、わたしの基本的な銃や西部(劇)に対する知識は小学校のころに読んだムックどまりなのですが、それでもやっぱり楽しかった。
ある理由で銃弾が当たらない秘法を授けられている主人公の賞金稼ぎが、日本からやってきた忍者シノビとコマンチの呪術師の技をもつ美女ポーラとともにそれぞれ不思議な能力をもつ4人の無法者を追う。
その旅の過程でワイアット・アープなど西部で名を成す有名人も多数登場し、敵になったり味方になったり主人公たちとスリリングが関係を結ぶことになる。
西部の厳しく美しい自然でなんとか生きていく人々の姿は、海の底に眠る巨大な存在の力に翻弄される無力な人類の姿に重なり、もの悲しさが全篇の底流に流れている。
そして主人公と無法者たちの捻じれた関係性(基本的には同じ力を持っている)も良いけれど、美味しいところは全部シノビが持っていく。
NINPOU万能過ぎだ(というツッコミを主人公がしているくらいw)。
シノビが主人公の作品も予定されているようなので、決め台詞は「基礎学習だ」でお願いしたいです。