『ピース』ジーン・ウルフ著 西崎憲・館野浩美訳 国書刊行会

ピース

オールデン・デニス・ウィアという老人(?)の回想(?)の物語。
彼が頭に思い浮かべるのは今のこと過去のこと未来のこと。
少年時代の美しい叔母との暮らし。叔母の求婚者たちとの様々なエピソード。
中年時代、図書館員との恋と冒険と古書をめぐる推理。
語られることによって読者の脳裏に浮かぶ物語。
それと同じくらい語られないことによって浮かぶ物語。
これってひょっとして……じゃないか、と(登場人物たちが気がついていないことが)判ったとき、深くウルフの描く物語に囚われる。
溜息のでるような美しさで、強く魅了してくれる傑作でした。