『さよならの儀式』 大森望・日下三蔵編 創元SF文庫

さよならの儀式 (年刊日本SF傑作選) (創元SF文庫)

創元SF文庫の〈年刊日本SF傑作選〉の第七集。
今回も安定の満足度、いや、傑作揃いで驚いた。
巻頭表題作の宮部みゆき「さよならの儀式」が、泣かせロボット物の定番感ある話と思いきや、主人公の心情設計の巧みさで陳腐さを回避して傑作に。
そこに藤井大洋「コラボレーション」草上仁「ウンディ」オシキタケヒコ「エコーの中でもう一度」藤野可織「今日の心霊」と様々な方向性の傑作が続く。
ヒリヒリするラノベ石川博品「地下迷宮の帰宅部」圧倒的に哀しい怪獣漫画、田中雄一「箱庭の巨獣」を堪能し、センチマーニの友人に感情移入する不思議さを円城塔「イグノラムス・イグノラビムス」で味わい、詰め込み過ぎなカッコよさと潔さともったいなさを冲方丁「神星伝」で痛感する。
そして今回最も気に入った作品は巻末の門田充宏「風牙」。
サイコダイビング+犬。
サイコダイバー物が、というか人の記憶がある種のタイムマシンとして作用することを見事に活かした傑作。
そして、そこに犬が重要な役割をはたしていれば、これは読むしかないでしょう。

記憶と言えば前巻の『極光星群』を読んだ記憶がないことに、途中が気がついた。
買った記憶はあるのだけど……。一年ってあっという間だ。