『消滅の光輪』上・下 眉村卓 著 創元SF文庫

消滅の光輪 上 (創元SF文庫 ま 1-2)消滅の光輪 下 (創元SF文庫 ま 1-3)
ロボット官僚たちを率いてたった一人で植民惑星を担当する<司政官>。
若き司政官マセが、初めて担当する植民惑星ラクザーンで全住民の退避のために奮闘する。

そんなあらすじから想定される方向に話は進むのだけど、読んでいるときの印象は全然違うものになる。
膨大な手続き、反対運動、パニック、資金調達。
通常想定されるそれらは確かに出てくるけど、あくまでもマセという個人を通してのみ、作中で描かれる。
マセがSQ1と呼ばれるロボット官僚群の頂点たるAIから情報を得ているように、読者もまた感情を排して客観的に(ロボットのように)思考するマセから情報を得て、マセが行っているように頭の中で惑星ラクザーンを描いていくことになる。
その頭の中に描かれた世界、という感覚がこの作品を支えるリアリティだと思う。
そのため、密度の濃い描写とかではなく、あくまでもマセがどう思ったかが描かれている。
しかし、その組み上げられた世界すらも前提でしかないのがこの作品のすごさです。
下巻の展開はわたしにはまったく予想できず、驚きの連続。
満足して読了できました。