『TAP』グレッグ・イーガン 著 山岸真 編訳 河出書房新社

TAP (奇想コレクション)
イーガンの新しい短篇集は、なんと<奇想コレクション>より登場。
全篇本邦初訳というありがたさ。
そして<奇想コレクション>ということで今までにない雰囲気のイーガンが読める。
今までだってイーガンは面白かったし最高なんだけど、この本で本音が見えにくかったイーガン君のお茶目な素顔を垣間見られた気がします。

  • 「新・口笛テスト」
  • 「視覚」
  • 「ユージーン」
  • 「悪魔の移住」
  • 「散骨」
  • 「銀炎」
  • 「自警団」
  • 「要塞」
  • 「森の奥」
  • 「TAP」

どれも面白かったけど、「視覚」「銀炎」「要塞」がお気に入り。
それでもベストはやはり表題作かな。
「新・口笛テスト」から読み始めて、中心に配置された中篇「銀炎」で1回で(1冊の本として)クライマックス。
いいんだ、これが。
緊張感と現実への鋭いまなざし。
そして『N空間の四肢分離神秘エンパス姉妹』(笑)。
様々な要素が見事に活きています。
後半戦は「自警団」からスタートして巻末中篇「TAP」へ。
この本の各短編を読み進んできた人なら、イーガンらしさ爆発の『TAP』にもきっと入り込めると思う。
スキャン&プレイということの意味を考えながら。



という訳で大満足の傑作短篇集。
個人的にはこの本がイーガン短篇集でいちばん好きです。



「TAP」を読んでから今度は逆に前に進んで行って「銀炎」に到達したとき、もしかしたら「TAP」の印象が変わるのかも。
あるいは「銀炎」の印象の方が変わるかも。
いつか試してみたい。