『サラン・故郷忘れじたく候』 荒山徹 著 文春文庫

サラン・故郷忘じたく候 (文春文庫)
以前からいろいろと話題を聞く荒山作品は読んでみたかったのです。
それで6月にNOBさんに会った折に命令(笑)されたので買っていました。
えーと、柳生は出ないやつですね、これは。



連作ではないけど、限りなく連作に近い短篇集、でしょうか。
文禄・慶長の役の前後の時代を舞台に、様々な人々のドラマが描かれます。
すごく面白い。
わたしの拙い知識で頭に思い描いていた当時の風景が、逆の視点から捉えられることによって意味を反転させていきます。
その眩暈がするような感覚。
しかし、この本で綴られるお話が凄いのは、一旦逆にした視点を更に逆から見ていることにあります。
それはもちろん視点が最初に戻ったという訳ではなく、両方の視点から見ることを可能にしているのだと思いました。
巻末の「サラン 哀しみを越えて」のスケールの大きさ、ドラマチックさ、ラストのステキさも素晴らしいですが、「匠の風、翔ける」のストイックな面白さが一押しです。