『擬態 −カムフラージュ−』ジョー・ホールドマン 著 金子司 訳 海外SFノヴェルズ

擬態―カムフラージュ (海外SFノヴェルズ)
ホールドマンを読むのは『終りなき戦い』以来だ。
特に期待もせず先入観も持たずに読んでみた。
面白い。
大人の上手さだ。
2019年、深海で発見された謎の人工物をめぐる物語。
1931年、海からやってきた謎の存在<変わり子>の物語。
このふたつの物語(実はもう一つあるけど)が徐々に接近してひとつになる。
なんといっても、<変わり子>の物語が魅力的。
制約はあるが何にでもなれるその不思議な存在が、自分は何者なのか、どこから来たのか、を幾つもの時代と世界の各地を彷徨いながら探っていく。<変わり子>の探究心・知的好奇心が強くて、でも常識がなく(人間じゃないから)人の気持ちに鈍感なところは、SFファンの自画像といえるかも。
実はアーサー・C・クラークに70年代に会っていた、という記述なんか嬉しくなってきます。
広くお奨めできる作品ですが、このラストは好みが分かれるかも(個人的には結論には納得だけど、この話に相応しいかは疑問)です。