『冬至草』石黒達昌 著 ハヤカワSFシリーズJコレクション

冬至草 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)
えーと、石黒達昌がJコレクションに登場。
意外なようでいて、しっくりいってるような不思議な感じだ。
6篇収録のこの最新短篇集は、科学者や医師、新種の生物や不思議な現象などを共通のモチーフとしているが、限りなくノンフィクションみたいな気分で読めるSFから、医師の人間的な生活を綴った純文学までとジャンル的には意外と幅広い。
わたしのベストは「希望ホヤ」と「デ・ムーア事件」。
娘を救うため医学の常識に立ち向かう弁護士が、勉強してどんどん医学に詳しくなっていく過程が面白い「希望ホヤ」。
火の玉現象を追う二人の男を取材した擬似ドキュメンタリー風な「デ・ムーア事件」。
どちらも抑えた筆致で淡々と書かれたものでありながら、その静けさの奥にある感情が伝わってくる傑作です。