『火星縦断』ジェフリー・A・ランディス 著 小野田和子 訳 ハヤカワ文庫SF

火星縦断 (ハヤカワ文庫SF)
まず言えるのは、すごい読みやすい、ってこと。
500ページを越える厚さがまったく苦にならない。
これほどいい意味でも悪い意味でも、読んでいてストレスが掛からない海外SFって珍しいと思う。
ストーリーは、タイトルどおりに火星を縦断する話。
限られた資材・時間、行く手を遮る難所、そして人間同士の微妙な関係。
専門家ならではの細部までのメカニック描写、火星の厳しくも美しい景色の臨場感、そして生い立ちから火星探検までの人生をどう過ごして来たか、を書かれた個性的な登場人物たち。
これらを、こまめ(短いと2ページの時もある)に章立てをし、現在進行形の火星での出来事と登場人物たちの過去をほぼ交互にスッキリと書いている。
退屈する暇もありません。
ただし、SF要素も冒険小説要素もミステリー要素もあるけど、どれもあっさり目です。
それぞれのジャンル読者が泣いて喜ぶような作品というより、ジャンルを意識していない読者がすんなりと読める作品になっていると思う。
切り口によっては大作ハリウッド映画にも、泣かせの日本映画にも対応出来る原作本として重宝されそうな気もするが、たぶん映画化はされないんだろうな〜。