『黒い時計の旅』 スティーヴ・エリクソン 著 柴田元幸 訳 白水uブックス

黒い時計の旅 (白水uブックス)
エリクソンの第3長編が復活!!
ってことで10年ぶりに再読。
10年前と印象ちがうな〜。
気にならなかったところが気になるようになり、よく判らなかった部分が(前より)判るようになった。
ヒトラーのためにポルノ小説を書く作家とその小説の登場人物(のモデル)とヒトラーの奇妙な三角関係が、歴史を我々の知っているものから違う姿に変えていく小説。
…ちょっと違うな。いや、ちょっとじゃないかもしれない。
だいぶ違う。
違わないけど、違う。
うーん?
歴史を変えようという意思のある登場人物はいた。
結果として変わってしまった歴史もある。
でも因果関係は不明。かな?
例えて言うと、歴史の授業中に授業も聞かないで教科書にポルノ小説を渾身の力で書き込んでいたら、あんまり筆圧が高かったもんだから書いた部分の裏側の教科書本文が、破れて滲んで読みにくくなり、何だか以前とは違う文章として読めるようになった、ってところ。
まあ、物語の大筋はそういう部分のような気もするが、そうじゃない部分もたくさんある。
色々な人間ドラマや、美しくも物悲しいイメージの数々も素晴らしい。
再刊されて多くの人の手に入りやすくなったのが、素直にうれしい傑作です。