『ソロモン王の洞窟』 H・ライダー・ハガード 著 大久保保雄 訳 創元推理文庫

ソロモン王の洞窟 (創元推理文庫 518-1)
…良かった。
面白かったよ〜。
予想していた話とはだいぶ違ったけれど…。

我が心の「読まなきゃいけない本のリスト」には、(下の方にだけど)ずっと昔から載っていて、いつか読まなきゃと思っていました。
『リーグ・オブ』も読んだことだし、末弥版の表紙も出たことなので読み始めた訳です。
読むまでは、もっとおどろおどろしく、伝奇物の雰囲気や秘境冒険の雰囲気があると思っていたのですが、(もちろんあることはあるのですが)むしろ印象に残ったのは男のロマンの方でした。
そうロマンです。
あんまり活躍しない主人公アラン・クォーターメンの語りは冷静なようでいて、実は感傷的で(ある意味)ロマンチックな表現を積み重ねていきます。
そこに描かれるのは、狩猟の喜びや自然の美しさ、そして男同士の友情。
何といっても、主人公トリオの個性の書き分けと対比の妙が魅力的でした。
ヘンリー卿の強さとやさしさ、グッド(元)大佐の脚線美とはずれない眼鏡。
そしてクォーターメンの自分の弱さと向き合う誠実さ。
結果として、美しいものや気高いものを求める旅を三人は行なったのでした。
そして、それらを手に入れもし、同時に失いもしました。