『ルナ Orphan's Trouble』 三島浩司 著 徳間書店

ルナ Orphan's Trouble
第4回日本SF新人賞受賞作。
謎の物質「悪環」に取り巻かれてしまい鎖国状態になった日本。
第二次大戦後まもなくのように物質は配給制になり、闇市が横行していた。
そんな中でもひときわ混沌の度合いが高い大阪の街で、「孤児」となった少年や少女、テキヤの男や娼婦グループのリーダーの女性、その野心家の兄らが、ある者は生きるため、ある者は死を求めて、ある者は日本を「悪環」から救うため動き出す。

この作品の魅力は「動き」。
キャラクターたちは街中をたくさん歩く。
ちょっと遠くまで行くには自転車が主武器だ。
苦労して手に入れたガソリンで、少年とテキヤが車を奇跡的に動かすところもいい。
そして一番の見せ場は競馬。
御堂筋のアスファルトを疾駆する競走馬。
それに跨る少女。
ちっぽけな島国の中に閉じ込められた日本人たちは、それでも「動き」続ける。

ただ、この作品は文章にクセがあるので、慣れるまで読むのに苦労しました。