『万物理論』グレッグ・イーガン 著 山岸真 訳 創元SF文庫

万物理論 (創元SF文庫)
やっと終わった。いやー、時間が掛かった。
最近忙しかったのでほとんど通勤の電車の中でしか読めなかったが、読んでる間は様々な忙しさを忘れることが出来た。
大傑作。そして驚くベきことに(イーガンにしてはかなり)万人向けのエンターテインメント作品になっている。
近未来。架空の人工島を舞台に、若きサイエンス・ジャーナリストが失恋の痛手から立ち直り、天才女流物理学者との交流やテロリストとの戦いの中で真実の愛を見つけだす話、とか言って普通小説のフリして売り出しても、あながち間違いではないような気がするくらい…。
大ネタの衝撃力やまだ見ぬイメージの凄さは前の2長篇に一歩劣るけど小ネタの詰まり具合やストーリーの面白さはピカイチかな。ページをめくる手が止まらなくなる所が結構ある。
裏表紙のあらすじ(「万物理論」を発表する学会)に辿り着くまで120ページ以上も掛かっているけれど、そこまででもすでにご飯三杯いけるくらいのネタの濃さだし。
特に、主人公アンドルーが取材する最初のネタは強烈。殺人事件の被害者を化学的に「死後復活」させて、犯人についての証言を被害者本人から聞くという恐るべき捜査方法。
これを含む前半の取材内容が後半としっかり対応しているのもお見事。
今のところ今年の年間ベストかな。

実は、昨晩ねむい目を擦りながら最後まで読み終えた時、ラストはちょっとあっさりしすぎかなー、と正直思った。
もっとぶっ飛んだことが起こると思っていたのにー、って感じで。
今日確認のためにラスト50ページほどを読み返してみたら、自分が昨晩はちゃんと意味を汲み取れていなかったことに気付いた。
読み返すと、これでシックリいく結末になっていると思えたよ。
満足。

結論:ダメ男カメラ侍アンドルーの残念、切腹には笑った。…でも泣けました。