「小説」『バッテリー』 あさのあつこ 著  角川文庫

バッテリー (角川文庫)

面白いと評判を聞いていた児童文学。
文庫になったんですぐ買って、いつも通り積んでおいた。


やっと読めました。
傑作。


中学入学直前に地方都市に引っ越して来た原田巧。
彼がこの新しい町で出会う人々や、今まで彼の眼には入ってこなかった家族の意外な一面が、彼に様々な刺激となっていく模様が丁寧に描かれていきます。


この巧が実にいい。
天才ピッチャーで、完璧主義者で、人間関係をめんどうで煩わしいと思い、でも他人には理解して欲しくて、他人の気遣いが判らないほど勝手でもない。
うわー、嫌なガキ。
そう何度思ったことか。
でも、…いや、でも、ではなくだからこそ魅力的だ。
どの要素も今の彼を形作る大切な要素だから。


あと、少年時代のわたしも(こんな凄い才能は無論なかったが)こんな性格でした。
だから、巧の気持ちはよく判ります。今では巧のお父さんとお母さんの気持ちも判る年齢になってしまいましたが…。


おおきく振りかぶって』のファンの人にはもちろんおすすめですが、意外なところで夢枕獏キマイラ・吼』シリーズのファンにもおすすめ。
少年の精神と肉体の、混沌と感触を的確に描いて、『キマイラ』の初期を思わせるところがありますので。