『ケルベロス第五の首』ジーン・ウルフ 柳下毅一郎訳 国書刊行会

ケルベロス第五の首 (未来の文学)

三番目の「V・R・T」読了。
これにて『ケルベロス第五の首』完結。

今度は思いっきりミステリー寄りの話になってました。
ある軍人が調べる囚人に付いての記録。
録音テープ。
報告書。
手紙。
英作文練習帳。
軍人は、あるときは尋問テープを聞き、あるときは報告書を読む。
手紙をちらりと見たり、練習帳の汚い字を見たりもする。
ところどころ飛ばしたり、戻ったりしながら…。
そして徐々に浮かんでくるその囚人の奇妙な人生。
彼は何故囚人となり何故長々と尋問をされているのか。

読み始めると、その囚人が誰かはすぐに判りますが、囚人の記録を調べている軍人の、作品全体での位置付けが判りませんでした。
この中篇内での位置付けもよく判りませんが。

それでも、少しずつ囚人の正体が判って行く過程はスリリングに読めました。

あと博士と少年の聖地探索の場面は、イメージやムードが素晴らしいです。

最後まで読み終えても「ケルベロス第五の首」「ある物語」の本当の意味がぱっと判ったりはしません。

これから考えつつ、ゆっくりと読み直していきます。