『ハイドゥナン』上・下 藤崎慎吾 著 ハヤカワSFシリーズJコレクション

ハイドゥナン (上) (ハヤカワSFシリーズ・コレクション)ハイドゥナン (下) (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)
まずは、南国の景色の美しさが印象に残る作品だった。
島の風景、空、海、人々。
そして深海の不思議さと魅力もたっぷりと描かれている。
深海の描写自体もすごいけど、深海調査船のディティールもしっかりとたっぷりと臨場感あり。
お話は、共感覚の持ち主・伊波岳志と与那国島のムヌチ・後間柚の二人の運命的な関わりを中心に進んで行く。
科学的な情報や理論と呪術的な語彙と技術が、せめぎ合うというより違和感無く併記されていく感じ。
メインのネタ(メインだと思うけど違うのかな)はグレッグ・ベアの某長篇級のインパクトなんだけど、そこを盛り立てていくような書き方ではなく、普通にアイディアとしてあるだけ。
全体的に、良くも悪くもさらっと読まされてしまう。
多少活かし切れないエピソード(デネブサテライトが特に)があってもったいなかった。